こんにちは、看護師・山岸です!
前回のブログにてもご紹介させていただきましたお声ですが、
「看護師さん、僕はガンでもう長くない。だからね、毎日寿司を7貫食べて死にたいんだ。」
そうご希望頂いたとき、『ええ、そうですね。大丈夫ですよ。好きなものをお召し上がりください』と、ことがスムーズに進むのは、ドラマの中だけかもしれません。
実際には、お寿司を食べることができる嚥下状態なのか、脂質の多いおさかなや消化しにくい海苔をお召し上がりになることで考えられるリスクは何だろうかなど、様々なことを考え、訪問診療の医師やご家族様とも事前に相談を行います。『消化に負担のかかる海苔が大丈夫かな、海苔のない巻物以外なら食べても大丈夫だと思う』と、訪問診療の先生から許可を頂き、いざご本人様に意気揚々と『お寿司で食べたいネタは何ですか?』とお伺いすると、『軍艦! 軍艦が食べたい!』と仰ることも。軍艦……ということは海苔が巻いてあって、海苔が巻いてあるということは巻物で、だから軍艦とはすなわち巻物のことであって……。看護師一同頭を抱えたのを覚えています。
でも、最期にお寿司が食べたいというご本人様のご希望は何とか叶えていただきたい。
その思いでもう一度、主治医、看護師で話し合いをし、ご家族様ともお話をしました。
結果としまして、主治医の先生から『体調が悪くなったらやめるようにしましょう』とご指示いただき、ご家族様もご同意の上で、お召し上がりいただくことになりました。
病状の進行とともに徐々に食欲も減っていってしまい、最後の最後までお寿司を食べる、という願いは叶いませんでしたが、『お寿司を食べる』ということは、なんとか、叶えていただくことができました。
すごくおいしそうに軍艦のいくらを召し上がるお姿が、今でも僕は忘れることができません。
パリアティブケアホーム 入居相談員・看護師 山岸